毎日、同じ道を、同じように腕を振り、足を運ぶ。
その反復動作が体に染み付いた頃、ふと「奇妙な光景」が頭の中に流れ込んでくることはありませんか?

まるで、自分の体が自分のものでなくなり、意識だけが分離していくような感覚。
私は、その感覚を「『(カッコ)』の線の上を行ったり来たりしている」感じ、と呼んでいます。
- 1,2、1,2、と刻まれるリズムだけが現実。
- 自分の体が、まるで自動操縦の機械のようになる。
- 「今見ているこの光景」と「過去の記憶」が混線し、うまく思い出せないデジャブ(既視感)だけが反復される。
こんにちは。Tomoyaです。
これは、毎日ランニングを続けている人だからこそ訪れる、特有の現象ではないかと私は考えています。
そして、その感覚の真っ只中で、必ず浮かんでくる一つの疑問があります。
「私は、一体なんのために走っているんだろう?」
いつでも止められる。 止めたって、誰からも何も言われない。 それなのに、なぜか走り続けてしまう。
まるで、止まってしまったら「何か決定的なもの」を失ってしまいそうで。
その「何か」の正体がわからないまま、ただ失うことを恐れて、今日も足を前に出している……。
もし、あなたがこの感覚に少しでも共感してくれたなら、この記事を読み進めてください。
その奇妙なデジャブと、「走る意味」への問い。
それらは決してあなたがおかしいのではなく、むしろ「走りが洗練されてきた証拠」なのかもしれません。
ランニング中のデジャブ。その正体とは?
あの不思議な感覚。「またこの瞬間だ」という既視感。
これはオカルトでも何でもなく、その多くが医学的・心理学的に説明のつく「脳の正常な反応」です。
一般的に「デジャブ」は、脳の記憶処理システムの一時的な「ズレ」や「誤作動」だと考えられています。
【脳科学】デジャブが起こる主なメカニズム
記憶の誤処理(メモリグリッチ):
脳の「海馬」という部分が、新しい体験を誤って「古い記憶」として保存してしまう、脳の「保存エラー」のようなものです。
側頭葉の一時的な活性化:
疲労やストレス時に、記憶を司る「側頭葉」が微細な異常活動を起こすことで発生すると言われています。
類似パターン認識の混乱:
過去の体験(風景、匂い、体の感覚)と今の状況が似ていると、脳が「これ、知ってる!」と過剰に反応してしまう状態です。
「なるほど、脳の誤作動か」 ——しかし、話はそれだけでは終わりません。
なぜ、他のスポーツでもなく、「ランニング中」に、
あの「体と分離するような」特殊なデジャブが起こりやすいのでしょうか?
なぜ「走る」と奇妙な感覚に陥るのか?
あなたのその体験は、ランニングという「反復運動」と「脳機能」が深く結びついた、極めてロジカルな現象です。
ランニングのような一定のリズムを刻む運動は、脳波を「リラックス(α波)」と「浅い瞑想(θ波)」の状態に導きます。
これは「ランナーズハイ」の入り口とも言われ、脳の側頭葉(記憶)が活性化し、既視感を誘発しやすい特殊なモードに入ります。
ランナーズハイについての記事はこちらから
「腕の振り」「足の運び」。毎日繰り返すことで、これらの動きは「考える」ものではなく「体が覚えている」自動化された動き(=運動性記憶)になります。
これが、あなたの言う「体と分離された感覚」の正体です。
脳が「この動き、今もやっているし、さっきもやったし、ずっと前からやっている?」と
時間感覚の混乱を起こし、デジャブが生まれます。
動きが自動化されると、意識的なコントロールが不要になります。
論理的な思考(前頭前野)が静まり、記憶や感覚(内側側頭葉)が活発になる。
これは、心理学でいう「フロー状態(=ゾーン、没入状態)」の入り口です。
時間感覚が歪み、意識と無意識の境界が曖昧になる…。
あなたの体験は、まさにこれではないでしょうか?
「なぜ走るのか?」その問いが浮かぶ意味
そう。 ランニング中のデジャブは、脳のバグではなく、むしろ
「あなたの走りが効率化され、無駄な意識が削ぎ落とされた理想的な状態」である証拠なのです。
そして、その研ぎ澄まされた状態だからこそ、私たちは普段考えないような、本質的な問いに行き着きます。
でも、やっぱり『なんで走ってるんだろう?』って馬鹿らしくなるし、
止まったら何かを失いそうで怖い…
痛いほどわかります。でも、私はこう思うんです。
その『失いそうな何か』こそが、あなたが走ることで手に入れようとしている『答え』の正体なんじゃないか、と。
私たちが走る理由。 それは健康のため? 体型維持? 自己ベスト?
それももちろんあります。
でも、あの「分離した感覚」の中で問い続けるのは、もっと深い、自分自身の存在意義のようなもの。
私たちは、その「答え」がまだ見えないから、怖いんです。
そして、その「答え」が、走り続けた先に「いつか見えてくる」と信じているから、止まれないんです。

まとめ:そのデジャブは、「答え」に近づいているサイン
ランニング中に訪れる、あの奇妙なデジャブ。
それは、あなたの走りが洗練され、心と体が深く対話しようとしている「特別な時間」の訪れを告げるサインです。
- 不安にならない: それは脳の正常な反応であり、むしろ「良い走り」ができている証拠です。
- 感覚を受け入れる: 「フロー状態」の入り口として、その没入感を味わいましょう。
- 問いと向き合う: 「なぜ走るのか?」その問いは、あなたが走り続ける原動力そのものです。
同じように継続的に行っているが、何かを失ってしまいそうで止まるのを恐れていることは、あなたにもありませんか?
私は、その答えが何なのか、まだ明確にはわかっていません。
しかし、あの『(カッコ)』の線の上を今日も反復しながら、いつかその「答え」がクリアに見えてくると信じて、
止まらずに走り続けようと思います。





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