継続中:523日.2025.11.4

ランニング中の「時間がゆっくり流れる感覚」の正体。【タキスキネティック時間知覚の科学】

ランニングをすることで時間がゆっくりと感じられているイメージを表現。自身は早く動いているが周りの歩行者は止まっているように感じる。 脳の心理的感覚によって実際には時間は変わらないが体感としてはゆっくりに感じる。
目次

【プロローグ】世界が”スローモーション”に見える、あの瞬間

いつもの道を、いつものペースで走っているはずなのに。
ふと、周りの景色だけが、まるで映画のスローモーションのように、ゆっくりと流れ始める。
歩く人々の動き、木の葉の揺らめき、自分の呼吸の音さえも、一つひとつが鮮明に感じられる…。

外でランニングをするあなたなら、一度はこんな不思議な感覚を味わったことがあるのではないでしょうか。

「疲れているのかな?」 「ゾーンに入った、ってこと?」

いいえ、それは単なる気のせいではありません。

あなたの脳が、その潜在能力を解き放ち、時間を引き伸ばすという特殊能力を発動させている、科学的に証明された瞬間なのです。

Tomoya

こんにちは。
僕も、この「時間拡張」の感覚に魅了されている、一人のランナーのTomoyaです。

今日は、あなたの脳内で起きている、この驚くべき現象の謎を解き明かす、少しディープな旅にご案内します。


第1章:その”特殊能力”の名は、「タキスキネティック時間知覚」

まず、あなたが体験しているその感覚には、ちゃんとした学術的な名前があります。 少し難しいですが、覚えておくと、ちょっとだけランニング仲間にも自慢できるかもしれません(笑)。

タキスキネティック時間知覚 (Tachikinetic Time Perception)

ギリシャ語の「速い(tachys)」と「運動(kinesis)」を組み合わせた言葉で、高速移動時に、主観的な時間が長く感じる現象を指す専門用語です。 物理的な時間は不変でも、あなたの心の中の時計の進み方が、実際に変化しているのです。


第2章:なぜ時間は”伸びる”のか?あなたの脳内で起きている5つの超常現象

では、なぜ走ると、僕たちの心の中の時計はゆっくり進むのでしょうか? その裏では、あなたの脳が、まるでSF映画のように複雑で高度な情報処理を行っています。

ランニング中に時間がゆっくり流れるように感じるのはなぜですか?

それは『速度誘発性時間膨張』という心理現象です。
⇒移動速度が上がることで、脳が処理する視覚情報(専門用語で”オプティックフロー”)が急増し、脳が「多くの出来事が起きた=長い時間が経過した」と判断するためです。

さらに、ドーパミンの分泌や平衡感覚の刺激も、この時間拡張効果を強めています。

時間の流れを操る5つのメカニズム
① 視覚情報の大洪水【オプティックフロー】

走っている時、あなたの目から流れ込んでくる景色の情報は、歩いている時の3〜5倍に膨れ上がります。

この情報の洪水に、脳は「こんなにたくさんの出来事が起きたのだから、きっと長い時間が経ったに違いない」と判断し、体感時間を引き伸ばすのです。

② 脳の”時間解像度”が上がる

走るという行為は、空間認識を司る頭頂葉などを高度に活性化させます。
これにより、脳が時間を認識する”コマ送りの速さ”が上昇。
普段が秒間15フレームの映像なら→ランニング中は秒間30フレームの「高解像度映像」を見ているような状態になり、結果として時間がゆっくり感じられます。

③ ”快感物質”が、心の中の時計を加速させる

ランニングによる心地よさや達成感は、脳内でドーパミンを放出させます。
このドーパミンは、実は”心の中の時計”を速く進ませる効果があり時計の針が進むのが速くなると、同じ1分間でも、より多くの「チクタク」を経験することになり、逆説的に「時間がたくさんあった」と感じるのです。

④ ”平衡感覚”が、時間のテンポを揺さぶる

ランニング特有の上下動や左右への揺れは、耳の奥にある前庭器官(平衡感覚を司るセンサー)を強く刺激します。

この刺激が、脳の「時間体感」を司る領域に影響を与え、時間の流れ方の感覚そのものを変えてしまうのです。

⑤ 意識が”外”に向くことで、記憶が豊かになる

退屈な会議中、時計ばかり見ていると時間が遅く感じますよね?

あれは、意識が”内側”の時間に向いているからです。逆にランニング中は、意識が刻々と変わる”外側”の環境に向きます。

すると、後から一日を振り返った時に、「あのランニングの時間は、色々なことがあって充実していたな」と、記憶の上で時間が長く感じるのです。

これが、あなたの「時間を有効活用している」という感覚の正体です。


第3章:なぜ「ランナー」は、最強の時間拡張能力者なのか?

この時間拡張効果は、車や電車でも起こります。
しかし、数ある移動手段の中でも、ランニングこそが最も効果が高いと言われています。

移動手段前庭刺激(平衡感覚を司るセンサー)時間拡張効果
ランニング★★★★☆
自転車★★★★☆
早歩き★★★☆☆
★★☆☆☆
電車極小★☆☆☆☆

その理由は、ランニングが「身体運動+視覚流+前庭刺激」のトリプル効果を最大に得られるから。

さらに、自分の意志でペースをコントロールする「主体感(エージェンシー)」が、その時間の価値をより一層高めてくれるのです。


ランニングをすることで時間がゆっくりと感じられているイメージを抽象的に表現。 脳の心理的感覚によって実際には時間は変わらないが体感としてはゆっくりに感じる。
ランニングをすることで時間がゆっくりと感じられているイメージを抽象的に表現。 脳の心理的感覚によって実際には時間は変わらないが体感としてはゆっくりに感じる。

【結論】走ることは、人生という”時間”を豊かにすること

あなたがランニング中に感じていた、あの不思議な感覚。 それは、あなたの脳が持つ、驚くべき能力の現れでした。

あなたが踏み出す一歩一歩は、単に物理的な距離を進めているだけではありません。 あなたという存在が体験する、”時間の密度”そのものを、濃く、深く、豊かにしているのです。

マンネリを感じていた、いつものコース。

「今日は、自分の脳がどうやって時間を引き伸ばすか、観察してみよう」

そんな新しい視点を持って走り出せば、あなたのランニングは、もっと面白く、もっと奥深いものになるはずです。

ランニングのさらなる深淵へ

あなたの脳と体には、まだまだ解き明かされていない不思議が隠されています。その可能性を探る旅を、一緒に続けませんか?

ランニングをすることで時間がゆっくりと感じられているイメージを表現。自身は早く動いているが周りの歩行者は止まっているように感じる。 脳の心理的感覚によって実際には時間は変わらないが体感としてはゆっくりに感じる。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次