【プロローグ】ランナーにとって、一年で最も”言い訳”がしやすい季節の到来
凍てつく風。布団の中の、あの抗いがたいほどのぬくもり。
冬。それは、ランナーにとって、一年で最も甘美な”言い訳”が用意された季節です。
「今日は寒すぎるから、やめておこう」 「暗いし、危ないし…」
この壮絶な「自分との戦い」に、あなたも毎朝、敗北を喫してはいないでしょうか。
その気持ち、痛いほど分かります。誰にも強制されていないからこそ、己の弱さが容赦なく顔を出す。
こんにちは。僕も毎年、この季節の訪れに心を揺さぶられている、一人のランナーのTomoyaです。
しかし、断言します。
この厳しい季節こそが、あなたをただの”ランニング愛好者”から、”本物のランナー”へと変える、
最高の砥石(といし)なのです。

第1章:冬は「準備期間」。春に、一皮むけるために。
僕にとって、冬は「忍耐と準備のシーズン」です。
タイムを縮めることや、距離を伸ばすことだけが、ランニングの成長ではありません。
- 環境への適応能力:
凍える寒さの中で、自らの熱で体を温める術を身につける。
- 精神的な強さ:
部屋の暖かさという誘惑に打ち勝ち、一歩を踏み出す意志を鍛える。
この冬の間に蓄えた力は、雪の下で春を待つ球根のように、暖かくなった瞬間に、爆発的な成長となって現れます。
第2章:僕が膝を壊した冬の過ち – あなたに同じ道を歩ませないための”鉄の掟”
しかし、その成長は、絶対に「怪我をしない」という大前提の上でしか成り立ちません。
これは、過去の僕への戒めであり、あなたへの最も重要なメッセージです。
かつての僕は、一年中同じイメージで走っていました。
冬の朝、いつものように走り出した瞬間、足に走る鈍い痛み。
寒さで固まった体は、あなたが思う以上に脆く、”ガラスのような状態”なのです。
その痛みを無視して走り続けた結果、僕は脛と膝周りの痛みに、約1か月も悩まされることになりました。楽しいはずのランニングが、痛みをこらえる「リハビリ」の時間に変わってしまったのです。
- 冬のランニングで最も注意すべきことは何ですか?
スタート時の体の冷えによる怪我です。
体は”ガラスのような状態”なので、ウォーミングアップを徹底し、
走り始めは夏や秋より大幅に出力を落として、徐々にペースを上げる『スロースタート』を絶対に守ってください。
夏や秋の軽快な感覚は、一旦すべて忘れてください。
冬のスタートは、忍び足で歩くくらいの超スロースピードから。体が芯からポカポカと温まってきたのを感じてから、ゆっくりと、本当にゆっくりと、いつものペースに戻していく。
これこそが、あなたを怪我から守る、冬の”鉄の掟”です。
第3章:寒さを”快感”に変える、冬ランだけの特別なご褒美「無敵モード」
厳しいだけの季節かと言えば、決してそうではありません。
冬には、冬にしか味わえない、格別の”ご褒美”が待っています。
走り始めてしばらくすると、不思議な感覚が訪れます。
自分の体の周りに、一枚、温かい空気の”衣”が生まれるような。
あれほど冷たかったはずの外気が、全く気にならなくなる。
これは、アドレナリンが駆け巡るランナーズハイとは少し違う。 もっと穏やかで、静かな高揚感。
サウナの後に水風呂に入り、外気浴で”ととのう”あの感覚に、とてもよく似ています。
僕は、これを「無敵モード」と呼んでいます。
このモードに入れば、寒さはもはや敵ではありません。むしろ、自分の内なる熱を際立たせる、最高のスパイスに変わるのです。
この「無敵モード」は、あくまで一時的なものです。
走り終えて体温が下がり始めると、一気に寒さが襲ってきます。油断せず、すぐに暖かい場所へ移動し、汗を拭いて着替えることを徹底してください。

【エピローグ】そして、必ず春は来る。
冬のランニングは、自分との対話です。
寒さに負けそうな弱さも、怪我の痛みも、それを乗り越えた時の喜びも、全てがあなたを成長させてくれます。
諦めないでください。 完璧じゃなくていい。必ず春は来る。
5分だけでもいい。 昨日より一歩でも前に進めたなら、あなたは紛れもなく、昨日の自分に勝利したのです。
そして、厳しい冬を耐え抜いたあなたを、柔らかな春の風と、驚くほど軽くなった体が、必ずや温かく迎えてくれます。 その瞬間、あなたは気づくはずです。
あの忍耐の日々が、この最高の瞬間のための、何よりの準備期間だったのだと。
ランニングは、四季と共にあります。それぞれの季節の戦い方を知ることで、あなたは一年中、成長し続けることができます。







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