「練習ではあんなに調子が良かったのに…」
「また後半で足が止まった…」
レース後、冷たいアスファルトの上で天を仰ぎ、自分のふがいなさに唇を噛み締めた経験は、あなたにもありませんか?

あの日の悔しさが、私を変えるキッカケになった。
大会で失敗したランナーより
こんにちは。Tomoyaです。
私もかつて、大会のたびに「今日こそ、今までの自分を超えるんだ!」と意気込み、そして砕け散ってきたランナーの一人です。
「今以上」を求めれば求めるほど、体は硬直し、呼吸は浅くなり、結果はいつも練習以下。
しかし、ある一つの「意識改革」をきっかけに、私はレースで安定して自分の力を出し切れるようになりました。
そして不思議なことに、その結果として自己ベストも更新できたのです。
その意識改革とは、
「今以上」ではなく、「今現状のMAX」を出し切ることに全集中する。
たったこれだけです。 「なんだ、そんなことか」と思いますか?
いいえ、これこそが「自己ベストの呪い」からあなたを解放する、唯一の鍵なのです。
この記事では、なぜ「今以上」を求めると失敗するのか、そして「現状MAX」を引き出すための具体的なステップを、私の体験とともにお話しします。


なぜ「今以上」を目指すと失敗するのか?
私たちはなぜ、大会という「ハレの日」になると、今以上の結果を出したいと思ってしまうのでしょうか。
それは、「大会=特別な日」という刷り込みがあるからです。
そして、その思考が悲劇を生みます。
- 無謀なトレーニング: 「今以上」を求めるあまり、直前期にきついメニューを詰め込み、疲労が抜けきらないままスタートラインに立つ。
- オーバーペース: 周囲の雰囲気に飲まれ、自分の「現状MAX」をはるかに超えたスピードで突っ込み、中盤でエネルギー切れを起こす。
- パニック: 「こんなはずじゃなかった」と焦り、フォームが崩れ、呼吸が乱れ、負の連鎖に陥る。
「うわっ…全部当てはまる。特に雰囲気に飲まれて頭が真っ白になる…」
わかります。私もそうでした。でも、その焦りが一番の敵なんです。
限られた時間で『今以上』を追い求めるのは、自ら体を酷使し、本番での失敗を予約しているようなものなのです。
思考の逆転。「現状のMAX」に焦点を当てるメリット
では、意識を「今以上」から「今現状のMAXを安定して出す」ことに切り替えると、何が起こるでしょうか?
驚くほど、練習の「質」が変わります。
焦点が「どうやったら今の状態を安定して出せるか?」に変わるため、自分の習慣や体の声に、深く耳を傾けるようになります。
目的に対して方法を考える:例
- 「どうすれば、このペースを軽く維持できるか?」
- 「後半で失速しないためのエネルギー配分は?」
- 「レース本番の緊張状態をシミュレーションして、弱点を見つけよう」
このように、漠然とした「速くなりたい」という願望が、
「課題の特定と対策」という具体的な行動に変わるのです。
この「現状MAX」を求める地道な積み重ねが、日々のランニングに「ちょっとした余裕」を生み出します。
そして、その余裕こそが、大会本番で不思議な力(=練習で培ったMAXの力)を安定して発揮させてくれるのです。
「今以上」を求めるのは「賭け(ギャンブル)」です。
「現状MAX」を求めるのは「戦略(マネジメント)」です。
自己ベストは、戦略の先にご褒美としてついてくるものです。
私が実践する「現状MAX」を引き出す3ステップ
「現状MAXを出す」と言っても、まずは「自分の現状MAX」を知らなければ始まりません。 ここでは、私がレースに向けて「自分を知る」ために行っている3つのステップを紹介します。

ステップ1:【知る】自分の「限界値」と「違和感」を探る
まずは、今の自分を丸裸にします。
いつもより高い出力(例えば、レース本番で狙いたいペース、あるいはそれより少し速いペース)で一定距離を走ってみます。
この時、タイムだけを見てはいけません。 自分の身体のどこに「違和感」が出てくるかを、スキャナーのように探ります。
違和感ポイントチェック例
- 呼吸: どこで「ゼエゼエ」から「ヒューヒュー」に変わるか?
- 腕: 腕振りが雑になっていないか? 肩に力が入っていないか?
- 横腹: 痛みが出始めるのは何分後か?
- 足: 太ももが重くなるか? ふくらはぎが張り始めるか?
この「違和感ポイント」こそが、あなたの「現状MAX」の天井です。
ステップ2:【整える】「違和感」を消すための調整
違和感ポイントが見つかったら、それを「安定」させるための対策を考えます。
「どうやったら、この高い出力でも安定して走れるか?」
私の場合、特に以下の3点に重点を置いています。
(1)呼吸:肺・腹・足の一体感
私にとって最大の「違和感ポイント」は呼吸でした。苦しくなると、アゴが上がり、顔が上ずってきます。
- 対策:
意識的にアゴを引き、視線を少し落とす。この角度が一番安定します。
- 意識:
腹直筋(お腹)に軽く力を入れ、意識を置く。これにより横隔膜が下がりすぎず、肺の容積を最大限に維持できる感覚があります。
(2)フォーム:全身運動の意識
ランニングは全身運動です。うまく使えていない部位があると、そこが弱点となり、後半の失速や痛みを生みます。(特にお腹周りの脂肪は、揺れることで無駄なエネルギーを使うと感じています)
- 対策:
「太もも」を意識的に使う。太ももは筋肉が大きいので、多少負荷をかけても耐えられます。
ふくらはぎなど末端の小さな筋肉に頼らないようにします。
- 意識:
自分の体で「使えているな」と感じるポイント(私にとっては腹と太もも)を探し、そこを連動させるイメージで走ります。
(3)食事:内臓のエネルギー分散を防ぐ
レース中に最高のパフォーマンスを発揮するには、「走る」こと以外にエネルギーを使わせないことが鉄則です。
- 対策:
満腹で走らない。胃が消化活動を始めると、そちらにエネルギー(血液)が取られてしまいます。
- 意識:
レース前はバナナやエネルギージェルなど、消化吸収が良く、すぐにエネルギーになるものだけで済ませます。
(これはまた別記事で詳しく解説しますね)
ステップ3:【持続させる】部分と全体を鍛える
「違和感」を消す調整ができたら、それを「持続」させるためのトレーニングを取り入れます。
マラソンは長距離走です。一瞬の速さより、安定した「持続力のある筋」が必要です。
私の場合、特定の部位(腹筋や太もも)を意識した補強運動と、レースペースで「楽に」走る時間を延ばす持続走(ペース走)を組み合わせています。
体のコアを強化するプランクは、ほぼ毎日のように行っています。

まとめ:「現状MAX」を制する者が、レースを制す
- 「今以上」という呪いを捨てる。
- 「現状MAX」を安定して出すことに意識を切り替える。
- 次の練習で、自分の「違和感ポイント」を探してみる。
「今以上」を追い求めるあまり、本番の雰囲気に飲まれ、頭が真っ白になってしまう…。
それは、本当にもったいないことです。
私たちが積み上げてきた練習は、決して裏切りません。
裏切っている(ように見えている)のは、「今以上」を求めすぎて冷静さを失った、本番の自分自身なのです。
「現状のMAXを安定して出すこと」
この意識が、あなたの体をリラックスさせ、練習通りの、いや、練習で培った力のすべてを解放させてくれます。
さあ、次のレースは「今以上」の幻想を追いかけるのをやめて、「現状のあなた」が持つ最高のパフォーマンスを発揮しにいきましょう。





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